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滲む墨痕
第3章 雪泥鴻爪

 それ以上藤田の口からなにかが語られることはなく、車はひたすら白く色づいた道を走りつづけた。さきほどと同じ駐車場に辿り着くと、街灯を避けるように奥で停車した。
 暖房を止めないためか、ここに長居する気がないからか、藤田はエンジンを切らない。潤はシートベルトを外し、気休めに纏めなおした髪を確認するようにもう一度撫でつけてから、ひかえめに隣を見た。

「あの……送っていただいて、ありがとうございました」

 薄暗い中にある横顔は、なにを見るわけでもなくただ前方に視線を送っている。その空気は硬い。
 潤はどうすればよいのかわからず唇を噛みしめた。このことはなかったことに、とでも言い残すべきだろうか。

「……では、帰ります」

 結局それしか言えなかった。助手席のドアを開けようと手を伸ばしたとき、突然近づいてきた気配とともに腰に手を回されぐいと抱き寄せられた。
 藤田は髪に顔をうずめて匂いを嗅ぐように深く吸い、熱い息を吐く。そうして低い囁きを落とした。

「来月末、所用で東京へ行きます。逢えませんか」

 それは脳をゆらりと浮遊させる、魔性の響きだった。

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