この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
滲む墨痕
第4章 一日千秋

 裏口から母屋に入ると、先を行く女将が風呂場に向かった。潤は羽織の前を押さえて寒さに耐えながら、おそるおそるあとを追う。音がした浴室を覗くと、立派な檜風呂に湯が貯められはじめていた。そこに腰をかがめていた女将は、背後に立つ潤の気配に気づいたようにふと姿勢を正し、振り返った。

「湯加減は好きになさい」

 目を合わせずに一言残し立ち去ろうとする彼女に、潤は「申し訳ありません」と弱々しく口にして頭を下げた。女将の表情を想像すると、今すぐに消えてしまいたくなる。
 ぼとぼとと湯船が音を立てる中、感情を抑えた声が降る。

「これでもまだ誠二郎のそばにいられるというの」
「…………」
「答えられないのなら、もうやめなさい。この場所で夫に尽くすことができなければ、あなたの居場所はない」

 その厳しい口調が示すのは、単なるいびりの類いではない。女将自身の経験をもとにした痛切な思い。それを感じ取った瞬間、潤は反射的に顔を上げた。

/335ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ