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滲む墨痕
第4章 一日千秋
潤みをたたえる沼を細い指がこね回し、かすかな蜜音を二つ発した。なまめかしい拷問に耐えきれなくなった誠二郎は、とっさに美代子の腕を掴んだ。柔らかな肌に指が食い込むほど強く握るも、向けられる眼差しは意志を変える気配がない。
「……美代子さん」
長い年月をかけて散り積もった虚しい情欲を、静かな声で払い落とす。だがそれは、着物の裾を乱し痴態を晒したまま横たわる女の意味ありげなため息によっていとも簡単に目前に舞い上がり、鼻先をくすぐる。
また懐柔されるかもしれない、と誠二郎は限りなく絶望に近い期待を抱いた。こうして身体を従わされ、叶わない夢の中に閉じ込められるのだ。
そんな複雑な心境すらお見通しなのだろう、気だるげに上体を起こした美代子が身を寄せてくる。うろたえて彼女の腕から手を離し身を引こうとすると、不意に股間に伸ばされた手が、有無を言わさずそれを鷲掴みにした。