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滲む墨痕
第4章 一日千秋

 首元の白い半衿を掴んだ彼女は、それを着物ごと胸から引き剥がそうとする。すぐにでも前をひらいて豊満な乳房を解放したいのだろうか。誠二郎は帯をほどいてやろうかと一瞬思ったが、その手間すらもどかしく感じ、湧き上がる焦燥感のままに彼女の隣に横たわると、着物の合わせから手を差し込んだ。
 薄い襦袢の上から、その胸を荒々しく包む。そこにこもっている彼女の熱を感じながら、おそらく和装ブラジャーにより本来のふくらみが抑えられているそれを、広げた手のひらと指を使ってめちゃくちゃに揉み回す。あの頃に戻ったように、不器用で、乱暴で、激しい恋情を隠さない愛撫を与えた。

「あっ、あっ、許して……もう許してっ」

 美代子が泣きそうな顔をして肩にしがみついてきた。首の後ろに回された手の感触に懐かしさを覚えながら、誠二郎は至近距離にある彼女の濡れた瞳を見つめる。左目の下の泣きぼくろは、昔と変わらず彼女のどこか物憂げな眼差しを妖艶に見せている。

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