この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
滲む墨痕
第2章 顔筋柳骨

 音を立てないように、そっと、近くに膝を落とす。藤田は静かな呼吸を繰り返している。よくもこんなふうに座ったまま寝られるものだ。
 こうして無防備な表情を見ると、精悍な顔立ちの中に優しさが隠れているのがわかる。はじめはこの無精髭のせいで無骨な印象をもったが、髭を剃ればそうでもなさそうだ。
 不意に、そのまぶたがぴくりと動いて薄くひらいた。潤がとっさに視線をそらすよりも先に、まだ焦点の定まらない瞳で潤を捉えた藤田は、目を丸くする。

「あ……僕、寝ていましたか」
「は、はい。たった今起こそうと思って……」

 潤は小さな嘘をついた。ひそかに顔を眺めていたなどと知られれば、気味悪がられてしまう。
 そんな秘密を知る由もない藤田は、頭を下げて「すみません」と呟いた。

「今日は野島さんに迷惑をかけてばかりだ」
「いいえ。きっとお疲れなのでしょう」
「申し訳ない」
「先生は謝ってばかりですね」

 苦笑を返した藤田が腰を上げようとしたので、潤は先に立ち上がり机に戻った。あとをついてきた藤田は完成した『初志貫徹』を見下ろし、黙り込む。

/335ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ