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官能書道/筆づかい
第2章 優筆
 美貌の書道家は一糸まとわぬ姿で、鹿島の前に真っ直ぐに立った。
 両腕は胸も股間も覆わず、身体の脇に降ろしている。

 上背のある白い裸身が眩しいほどだった。

 スリムで硬質な裸身は細筆の穂先を思わせて、白く清冽に曲がりなく伸びる。
 しかし、細くくびれたウエストからヒップへの広がり、そして太腿へと続く流麗な曲線は充分に官能的で、二十八歳の成熟を示していた。

 ふくらはぎから足首までの流れるような造形は、勢いのある草書体を思わせる。
 こんな悩ましい流線を筆先で表現できるなら、鹿島は悪魔にでも魂を売るだろう。

 鹿島の視線はまもなく、涼子の身体の中心に集中した。

 漆黒の恥毛が鋭角の逆三角形となって生えている。
 柔らかそうな繊毛は縮れが少なく、両腿の付け根に向かって先細りになっていた。
 下腹部の生え際も、梳いたように綺麗に下向きに整い、三分の一ほど墨をつけた筆穂のようだ。

 真っ白な裸身に、そこだけが黒く艶やかだった。

(墨痕淋漓――とは、まさにこのことだな)

 鹿島は息をのんで、その美しい翳りを見つめた。
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