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逆転満塁ホームラン!
第8章 グッバイオオサカ
タイミング良く赤信号で止まった私達の乗るアルファード。
「柳、オレ降りるわ。タクシー拾っていく」
「ああ?マジで言ってんの?」
「ん。」
「……お前さぁ、冷静になれば?あと十分近くで着くのに今からタクシーに乗り換えるバカが何処に居んだよ」
「松本と連絡取るバカも、そんなに居らんやろ。それを言うなら。」
「へっ?あたしのせい?」
「……ッ、ああ!腹立つ!もうええ!降りる。」
子供の様にイキナリ大きな声でそんな事を言い放ってから、本当に車を降りてしまった天草。……呆気に取られそうだ。
「……。」
「吉瀬ちゃん、気にしなくて良いべ」
「いや、あんな言い方されたらさすがに気になるよ。何で?あたしが何か悪い事言うてもうた?」
「ん〜、悪い事っていうか…」
「蒼井、お前バカじゃねえの?何で天草の前で松本の話しするんだよ。」
「……。」
「オレが腕叩いた時点で黙っとけば良いものを、お前は馬鹿正直に全部話すから。」
「あんなあ?天草の性格は俺がよく分かってるんだよ。お前みたいな付き合いの浅い人間の判断よりも俺のする判断の方が、断然良い事は目に見えて分かってんのに…」
「………ッ。」
これでもか、と言う位に浴びせられる千葉ワタミという小動物から発される言葉の銃弾の嵐。
「はあ、ほんっとこれだからバカは…」
「──ッ、そんなん松本さんと天草が仲悪いなんか、あの時のテレビ電話で分からんかったし……!」
「天草と千葉さん二人して私が悪いみたいな、そんな言い方しやんでもいいじゃないですか!!」
ああ、ただでさえ大阪じゃないっていうのに。それでストレスが溜まってたというのに。
強いハズの私なのに。
意外に冷静な事が取り柄だったりもした私なのに。
バックミラーで様子を伺ってそうな柳君の視界に入っている事なんて、もうどうでも良かった。
一粒流れた涙を拭うと、何かの糸が切れたかの様にどんどん涙が溢れ出てくる。