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逆転満塁ホームラン!
第9章 何気ない優しさ
続々と運ばれてくる居酒屋メニューらしからぬオシャレな料理と共に増える空きのジョッキ。
身体の大きい彼達のペースは、かなり早くて……
そして、こういう場が好きなのか楽しいのかチワワ先輩も顔によく似合うカシスオレンジの三杯目をもう頼んでいた。
勿論、私はこの中の誰よりも飲んでいる。
「おっ、吉瀬ちゃんが早速──5杯目のビールいきました!」
「ちょっと止めてよ藤堂君、恥ずかしいわ。」
「ええ?何で?女の子も飲まないとね。」
馴れ馴れしい彼はいつの間にか私の隣を陣取っていて、多分その横にナイン組の、もう一人である逢沢君が引っ付いているのは脱ぎ出したら止める為だろう。
逢沢君はウィングスの1番バッター。
ホームランバッターでは無いものの、打率は安定してニ割後半から三割前半を叩き出している。
高卒二年目からスタメンに定着したから、どちらかと言うと努力の人寄りかな。
少し薄い顔は綾野剛に似ていて、まあ男前である事には違いなかった。
「なあ藤堂」
「んー、どうした?」
「ナノハちゃんの隣に居る子って誰?」
「ああ、あれはJJのモデルしてる山本アケミちゃん。まだ21とかそこらだったような気するけど」
「へえ……可愛いよな。」
「おっ、さすがお前もナイン組だな。この場でも女いくか?まあまあ俺も……実はナノハちゃんは連絡先知らねえし、行こうか行かまいか迷ってたんだけどな」
隣に私が居る事も忘れてるのか、すっかり飲み屋での会話みたいになってる二人の肩に優しく手を置いた。
「どーぞどーぞ、お気遣いなく。いってらっしゃい」
「吉瀬ちゃん、まじで行くよ?そんな事言うと。」
「うん。私ぜんぜ「吉瀬さん!良かったらお話しません?」
行きたいなら行ってこい、と母親の様な言葉で送り出そうとした私の視界に映るのはトマパン。
グレースコンチネンタル風の上品なワンピースにエルメスのスカーフは彼女に本当によく似合う。
時計がシャネルのボーイフレンドをチョイスしてるっていうのもセンスの塊みたいだな。