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逆転満塁ホームラン!
第9章 何気ない優しさ

「もう藤堂、お前辞めろよ〜」

と皆が声を挙げる度に、自分の乳首を引っ張る下品なキャッチャーさん。

女の子達は苦笑いをしたり、目を隠したりしてる中で唯一私だけが大爆笑をしていた。

それもそのはず、もう宴は二時間に差し掛かった。となると、アルコール摂取量もイケイケな私は俗に言う酔っ払い、ってやつだ。

「おっ、いいぞ〜藤堂君!」

「里奈、お前そんなオッサンみたいな煽りすんじゃねえべ?」

なーんていってる柳君もどこか楽しそうだ。


藤堂君が自分の乳首を摘みながら、イッキしているのに流された私がビールジョッキを持とうとした時……勢い余ってグラスが倒れる。

ガッシャーン、というド派手な音に騒いでいた皆も一瞬だけ静かになった。

「あ、ごめんね。ユカちゃん。」

隣に座るトマパンちゃんならぬ、ユカちゃんには掛かっていないものの……ああ、見逃さなかったよ。

A型で神経質な所が多々ある私は人の気持ちの変化には敏感な方だ。本気でウザそうな顔をした彼女の表情に、たとえそれが一瞬であっても気付かないはずがない。


謝ってるし、何なら貴方の方に溢れてもないんだからいいじゃん。と思ったのも束の間、ユカちゃんと夏菜子ちゃんが目を合わせてるのを見て、また嫌な気持ちになった。


「大丈夫かー?里奈。」

「うん、ごめんね。」

「気を付けないと指切るべ?って……あ、割れてはねえのか。じゃあセーフだな!ははっ!」

豪快に笑い飛ばしてくれた柳君も又、人や場の雰囲気には敏感な方。

彼の見事なフォローで、また楽しい空間に戻った。


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