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逆転満塁ホームラン!
第9章 何気ない優しさ
スマホは机の上に忘れちゃった為、真っ暗な空を見上げながら煙草に火を付けた時だった……。
アイツが隣に来たのだ。
自分のセブンスターを持ちながら。
「お、天草やん。」
「服、乾いてないん?」
「うん。でも、そこまで濡れてないし匂いもしないから大丈夫やで。ちょっとテンション上がってもうただけ。」
ターボライター独特の音が聞こえると、まもなくして紫煙が二つに増える。
ピースも相当だけど、セブンスターも独特の香りがするんだよね。まあ嫌いじゃないんだけど。
「あんま気にすんなよ」
「……え?」
「さっきの。」
「溢しちゃったコト?」
「まあ、それもそうやし。他の女の目線とか……オレ分からんけど、何かそういうのあるやん。女同士って」
不器用さは天草本人だ。
でも、こんな優しい言葉を掛けるのは天草じゃない。
相当驚いた顔をしていたのだろう。彼の事を見つめた私に一瞬だけ目を合わせるとバツが悪そうに顔を背けた。
「心配……してくれてんの?」
「はあ?何で俺がお前の心配すんねん。直ぐ泣くんやし、気にすんなやって言っただけやろが。」
"自惚れんなや"
とかいう、もう聞き飽きたあの言葉をしっかりと最後に付け足してるけど──へえ、優しいところもあるんだ。
「ふーん、そんなん言えるんや?」
「……ッ、ああ?お前は性格も食べるモンも飲むモンもオッサンやねんから、ビール溢すのは当たり前やしな。」
「オッサンらしくいけばええんちゃん、どーせ今言うた所でトマパンみたいに上品な女には成られへんし」
わざとらしく嫌味を垂れる彼だけど、それは照れ隠しだと今なら流石の私でも分かる。
何故か、そんな彼が突然可愛く思えて……一生懸命背伸びをしながら空いている左手で彼の頭を撫でた。