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逆転満塁ホームラン!
第9章 何気ない優しさ
時計の針は既に0時を回ろうとしていた。
さすがにナイターと云えど現役の選手達は明日も試合なので二件目は無しで、ここで解散となる。
由佳ちゃんに愚痴を聞いてもらって絶好調になった私は総司とラインをしながら周りの人達がそそくさと帰りの準備をするのを横目で見ていた。
「じゃあユカちゃん、心配やし家に着いたらラインしてね。」
「うん。夏菜子送っていくから遅くなるかもしれないけどちゃんとラインするよ〜。それより、里奈ちゃんは?」
「ああ、私は帰り遅いし土地勘無いから総司に迎えにきてって今打ってる所や……!」
言いかけた途中だった。
片膝立てて私と同じく潰れたチワワ先輩がフラフラになりながら帰るのを眺めていた天草が勢いよく立ち上がり、私からスマホを奪い取ったのだ。
突然の出来事過ぎて叫び声すら出なかった。
「………へっ?」
「お前、今何て言おうとしてた?」
「いやっ、総司に迎えに来てもらおうと「はあ?」
あからさまに不機嫌そうに、そう聞き返されると時間も時間だし場所も場所だし背筋がピーンっと伸びてしまう。
入口付近で呆れた顔で私達の事を見守る柳君は、長くなると判断したのかナノハちゃんにテーブルの上の灰皿を取って貰うと自分の煙草に火を付けていた。
セーフだったのは番記者の三人が既に帰っていたことと……絶好調だった藤堂君が無事、女の子を持ち帰れた事の二つだろう。
この場に藤堂君が居たら、空気の読めない裸芸で天草の機嫌を更に損ねていたと思う。
「何でお前は土地勘無いからって、一々迎えを住友総司に頼むねん?ああ?!」
「いや……だってそれ以外に友達もおらんし松本さんは広島や「今の話に松本関係ないやろが!」
やってられない、というように私の残りのビールを一気に飲み干した天草が勝手にスマホの充電を切った。
「え、ちょっ……!」
「あんなあ、俺も柳も東京にずっと居るんやし、これから一緒に働くメンバーやねんからもっと頼ったらええんちゃうんけ?」
「それをお前は、何かあればいつも……やれ住友だ、最近は広島の松本だって喧嘩売ってんのか?」
「俺がお前の事を寮まで送るのも無理やって……お前はそういう風に思っとるんけ?」
「いやいや、誰もそんな事言うてないやん。第一、柳君もアンタも今日は飲んでる「タクシーで帰ったらええやろが!」