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逆転満塁ホームラン!
第10章 九月のゲーム差
柿沢とは高校の同級生だった。
当時はそんなに仲良くなかったけれど、やっぱり同じ業界に居て大阪以外の土地で再会すると、そんな事はどうでもよくなりフツーのお友達になれる。
まあ、開口一番で……
【天草さんとの話し、横浜でも有名やけど……思いきり振ったんやってな?】
ってニヤニヤしながら聞かれたのは忘れもしない。
「辞めたってくださいよ、天草さん。」
「いーや、アカン。こいつ俺にケツキックしよったんやぞ。お前もみてたやろ?」
「里奈はアホなんで「……俺が言うのはええけどお前がコイツの事アホ言うな…!しかも第一、なんで下の名前で呼び捨てやねん。コイツは苗字で呼んでんのに。」
さっきまで私の事をみてたはずなのに……
そんな事を言いながら、今度は裕翔を睨みだすんだから、もうコイツは歯止めの聞かない犬だ。しかも馬鹿な犬。
私の事になれば、こいつが子供のようになるのは他球団でも常識の一つになりつつあるみたいで──。
ああ、これが噂の!と驚いてる選手も居れば、見慣れたこの光景に『またかー』なんて呆れながらも笑っている選手もいた。
そして、こうなった時に止めにくるのは……。
「もう辞めとけよ、天草と蒼井。」
そう、チワワ先輩。
何やらスマホを触っているから、もしかしたらさっきの私と天草の喧嘩を写真に撮って載せるつもりなのかもしれないな。
「だって天草が……!」
「ああ?!」
「……もう知らんっ!」
ヤンキーっぽさ全開でガンを飛ばされると、さすがの私も言い返せる時と言い返せない時がある。
今日は、なんかダメな日みたい。
どれみちゃんのように頬に空気を入れて、顔を背けてからウィングス側に走って向うと皆が置きっぱなしにしているスポーツタオルや練習用のシャツを抱えて裏へ向かった。