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逆転満塁ホームラン!
第10章 九月のゲーム差
今日の試合は、柿沢の好投で中々面白いゲームだった。
このままプロ初ノーランノーヒット達成か?!と横浜ファンが手を握る中、打席に立ったのは四番天草。
138kgのスライダーを見事、真芯に当てると球はゆるりゆるりと大きなスクリーンに当たった。
それが──今日の決勝打になったのだ。
「はあ、疲れた。久しぶりにあんな好投見たべ。俺も負けてらんねえわ。」
「でも柳さんは四回もノーヒットノーラン達成してるし、今年の沢村賞もほぼ決定でしょ?」
「いーや、逢沢。お前は甘いべ、ああいう若手がノリに乗り出したら怖いんだよ。」
なんて言ってるけど、実際の年齢は一つしか変わらないじゃん。と感じながら皆にアクエリアスを配った。
先程まで総司とラインしてたので、スマホには【何で二人で飲むのに麻布?止めとけ。】という冷たい内容の通知。
そう、私はターナーと云う店知ってる?と彼に聞いてみたのだ。
するとものの二分でこの返事。
麻布と知ってるって事は、多分総司もターナーとやらに行った事が有るんだろう。相手はトマパンだし、そこまで心配しなくても良いのに…。
「吉瀬ちゃん」
「なーに、柳くん。」
シャワー上がりで濡れた髪をゴシゴシしながら、もう慣れた手付きで私にバスタオルを渡した彼は恥ずかしがる事もなく目の前で筋肉のついた胸元を見せながら私服のシャツに腕を通した。
「今日、飯行くべ?ナイン組で」
「天草も?」
「何で俺の事いちいち聞くねん」
なんて嫌味を垂れたのが二つ先のロッカー前から聞こえたけど、無視だ。無視。
「有り難いけど今日は無理やわ」
「……へえ、友達でも出来たんじゃねえの?東京で」
「まあ、友達っちゃ友達かな。」
人を見る目は前職で大分養われた。
その結果、正直な話しユカちゃんは……友達だと言い切っていいのか悪いのか、そんな狭間に居る。
可愛いんだけど信用ならないっていうか。要らない事は言わない方が良いタイプ。