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逆転満塁ホームラン!
第11章 麻布女子になれないワタシ
とりあえずビールと、オーダーを通してから隣のユカちゃんに見つからない様に……素早く柳君にラインを打つ。
【男が居た。仮想通貨の取引所経営してる音川社長とその他三人。】
【やっぱり女二人の麻布では無かったわ。】
絵文字も顔文字も無い素っ気ない文章を送ってすぐに目の前の男に話しかけられた。
どうやらその他のオーダーは先に通してくれていた様で机の上には、オシャレなサラダやアヒージョが有る。
適当に自分の食べたいモノを小皿に入れながら、彼の顔を見た。
「はじめまして、由佳から聞いてるよ。ウィングスのマネージャーしてるんだって?」
「そんな感じですね、フリーターみたいなモンですけど。……蒼井里奈です、宜しくお願いします。」
フリーターとウソをついたのはチケットなどを強請られたら面倒クサイからだ。
ウィングスはかなりの人気球団で、あそこが出来てから日本のプロ野球の人気は更に上がってサッカーを又、越えてきたのだ。
チケットを迫られる可能性は大いに有り得るだろう。
「俺は、山田直輝。東京住友銀行知ってる?一応、そこの本店で働いてるんだよね。」
一応、なんて付けてるけど……自慢がしたいんだろうなあ。
だけど残念、普通の子なら目を輝かす場面かもしれないけど私には、そのグループの長男坊が親友に居るのだ。
何も驚かないし、むしろそんな事を振りかざしてる行動がアホに思える。……でも由佳ちゃんの顔を立てる為に、愛想笑いで思ってもない「凄いですねー」なんて言葉を紡いだ。
【どこに居るべ?乗り込んでやろうか?】
特徴のある機械音と共に画面に映し出される柳君からの返信。……乗り込むって。
確かに乗り込んできてくれたら私はこの場からさっさと帰れるけれど、それは無理過ぎる話しだ。
誰とラインしてるのー?なんていう言葉を夏菜子ちゃんに掛けられて、急に不安になった私は『センパイやで、明日の仕事の話し』とウソをついて返事はしない事にした。