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逆転満塁ホームラン!
第11章 麻布女子になれないワタシ
だからこそ、私が彼に対して何かを言う権利も無いんだけど。それでも、こんなラブラブな内容を送り合ってるところを見ると心が痛んでしまう。
ああ、我ながら面倒クサイ女だ。
でもこれこそが女の性だと思う。
「どうしたの?里奈ちゃん。何か顔がつれないよ?」
──私はきっと港区女子にはなれないんだろうな。
成れるのは、先程まで天草とラインしてたクセに今は成金社長のウンチクに目を輝かせて相槌を打ってる隣のトマパンみたいな強かな子なんだろう。
こういう環境に自分を置くと、いかにウィングスが私の事を自由にさせてくれてたのか、と云う事が痛いほど身に沁みて理解出来た。
普通なら選手達にもこういう態度をすべきだし、ご飯を食べに行っても女らしく何かを取り分けしたり聞き側に回ったりするべきなんだろう。
……でも、いつもウィングスの関係者とご飯に行く時はこんな感じ。良くも悪くも素の自分そのまま。
焼肉は柳くんが勝手に小皿に食べれる物を理解した上で乗っけてくれるし……バーなんかに行けば気を効かせた逢沢くんがジョッキの減り具合を見ながら次をオーダーしてくれる。
内海さんは私が酔っ払ってチワワ先輩の愚痴を言っても『そーかそーか、吉瀬ちゃんも大変だな』と頭を撫でてくれるし、天草も私のグラスが空だと『ビールでええんけ?』と確認してくれる。
挙句の果てには、あの喧嘩写真。
勿論、本気で喧嘩をしてるワケじゃないけれど何度も言う様に一スタッフが選手の事を追い駆け回したり、『オイコラぁ!』なんてタンカを切りながら拳を上げるフリをするのは普通なら有り得ない。
でもそれを笑って見つめてくれる球団と、写真に上げてとことん面白がってくれるチワワ先輩。
一度、こうやって俯瞰して考えてみると──私は何度も言う様に港区女子には成れないし、成る気も無いし……そうやって自我を尊重してくれる彼達に大して感謝の気持ちが止めどなく溢れ出てくる。
「里奈ちゃん?大丈夫?」
「ふふっ、うん。大丈夫よ。でも……ちょっとトイレ行ってくるね。」
──よし、トイレで軽くメイクを直してもう帰ろう。
こんな場所に居て生産性の無い話しをする位なら、家に帰って大好きな彼達がプレーしている動画でも見たい気分だ。