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逆転満塁ホームラン!
第11章 麻布女子になれないワタシ
ドカッと総司の同業さんの胸ぐらを掴んでいた腕を離し、まるで汚物を扱うかの様に軽く蹴り上げてから一直線で私の元へ来て……血に塗れた腕で強く抱きしめてくれたのは柳くんだ。
「里奈だよな?」
「…里奈、やで。柳くんがいつも心配してくれて味方になってくれる蒼井里奈やで?」
まだ正直、身体は絶好調ではないから──こんなに強く抱きしめられるとちゃんと息が出来なくて苦しい。
でも私の肩で鼻を若干グズグズさせている彼の優しさを思うと、そんな事を言う気にはなれなかった。
「…良かった。生きててくれたべ…?」
「生きてたよ。だから、その大事な手で無駄な事しやんといて。」
「あんたの腕はボールを投げて、チームを守る為の腕やろう。しょーもない奴達を殴る腕じゃない。」
ギュッと、また更に強く抱きしめられる。
今度こそ子供の様に声を上げて泣き出した柳くんの背中に私も腕を回して、まるで赤ちゃんをあやす様に何度も何度も、背中を叩いてあげる。
「私は生きてるし、何も無いから。」
「だから…もう止めて?」
「天草が暴れたら柳くんが止めるんやろ?逆に柳くんが暴れたら天草が止めてきたやろ?」
「二人ともが理性失ってどうすんのよ。」
そう言いながら小さく笑った時、柳くんが強引に私の身体から離された。そして、天草が私の両頬をガッチリとホールドして目を合わせてくる。
きっとコイツの拳も血まみれのはずだ。…そうなれば、私の顔にもきっと誰の血か分からない赤い液体が少しは付いてしまうだろう。
「里奈、大丈夫なんか?」
「うん。天草は?」
「俺は…別に「痛いやろ?人を殴ったら…自分も痛いやろ?」
「──。」
「私の為に、そんな痛みを覚えやんでいいから。」
「アンタの為に泣いてる青木くんを見て。…必死に返り血浴びても八つ当たりで振り回されても…それでもアンタら二人の事とウィングスの事を思って止め続けてた藤堂くんと逢沢くんを見て?」
「私が私だけの身体じゃない、とこうやって証明してくれたように……あんたら二人はアンタ達二人だけのモンじゃないって、みんなが証明してくれてるやん。」
ニコッと笑い、子犬の様に目に涙を溜めながらきっと誰かに引っかかれたであろう左頬を慈しむかの様に撫でてくれる天草流。