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逆転満塁ホームラン!
第12章 半端ない週刊誌
「……おっそいねん」
「ごめんごめん、用意してた。」
「用意してそれかよ。」
ズカズカと他人の家に入り込んでくる天草だけど、今日はなぜかイライラしない。
多分コイツは……誰かから私のニュースの事を聞いたのか、それとも自分で見つけたのか。とりあえず、心配して私の様子を見に来てくれたハズだから。
「一緒に行くぞ」
「え?球場に?」
「ん。」
「……ッ、あほなん?!こんな状況でアンタと私が一緒に出勤したら待ち構えてる記者達に、ここぞというチャンスを与えるだけやで?!」
「アホはお前の方やろ。一般はお前の顔知らんくてもテレビ関係のモン達は知っとるねん。そんな中でお前こそノコノコと電車乗って出勤するつもりやったんか?」
「……。」
「もし誰かが『これ、吉瀬ちゃんじゃね?』とか思って、隠し撮りをツイッターにでも上げたらどないなるねん?お前はレイプ被害者として顔を公開してる事と同じやねんぞ、それこそセカンドレイプちゃうんけ」
天草の口から【セカンドレイプ】なんて知的な言葉が出る事には驚いた。
女に対しての尊重とか一切無さそうなのに。いや、無いからこそミサトちゃんの前で乱交騒ぎを起こせてたに違いない。
「そうと分かったらさっさと用意しろや。」
「………。」
「返事は?!」
「はっ、はい!」
体育会系か!とツッコミたくなる天草のノリ。
そんなノリに少しだけ引きながら、でもお客さんだし心配してくれてるのは確かだから仕方ない。マグカップに冷たい牛乳を注ぎ、食べかけの林檎と共にテーブルに置いた。
……そして、それに対するお礼の言葉も無くソファーに偉そうに座ってスマホから聞き覚えのある洋楽を流す彼。
「テレビ付けて良いよ。」
「いらん。」
「テレビっ子ちゃうんやな」
「……おん。」
へえ、そこは素直なんだ。
本当は、テレビで私のニュースをしていたらヤバイ。と気を使ってくれてるからこそ音楽しか流していない彼なりの優しさなのにね。
……何気にカワイイんだよな、この人って。