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逆転満塁ホームラン!
第15章 幼馴染みの絆

【あと一人!あと一人!】
なーんて言う、野球ファンなら誰もが一緒に応援した事のある言葉に答える様に──柳君がガッツポーズをして、何かを叫ぶと観客達も拍手と歓声で九回三者凡退の偉業を褒め称えた。
流石だ。
赤星くんも良いピッチャーだけどやっぱり格が違うかった。
国際試合でエースとして活躍したり…沢村賞を何年も連続で取っている柳君には独特のペースが有る。決してプレッシャーや周りの雰囲気には流されない己のペース。
そして、それがまた彼の強さになっているのだろう。
「凄い…凄すぎるっ…!」
チワワ先輩が完全に女性側の目付きになっているのには気付いたけれど敢えて知らないフリをした。
ベンチに戻った柳君は、まず最初天草に抱きつかれてから順番に内海さん、青木くん……と。ああ、彼が潰れちゃう。
「吉瀬!!見たか?!」
「ちょっ、痛い千葉さん!!みましたっ、この目で此処で…ちゃんと見てましたって!!」
かなりのチカラで肩を揺さぶられて脳震盪を起こしそう。
他のスタッフさん達も対してチワワ先輩と変わらない事をしてるから、それだけウィングス側をアツくさせた事は間違いない。
「お前の大好きな──阪神の主砲と言われた福谷さんを…!アイツは、男らしくドストレートの真ん中で勝負仕掛けやがった!!!」
「しかも163キロだあ?!日本一じゃねえかよ!!」
興奮が冷めない彼にとりあえず同調していると、ヒョイっと私達の事を見つけた柳君が男らしい指で私とチワワ先輩の二人を指した。
九回の表、もし裏にウィングスが3点を返せば投球は最後となる場面で……
確かにキャッチャーのリードもそれに応えた柳くんも男らしいという言葉しか浮かばないほどに男らしい終わり方をした。
真ん中のストレートなんて……速さで空振りさせるなんて……漫画の世界でしか有り得ないことなのに。

