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逆転満塁ホームラン!
第16章 幻のヒーローインタビュー

「なるほど……途中、四回5失点と云う結果で雲行きが怪しくなったのは確かですが、それでも諦めずに内海さんと柳さんが無失点で抑えようとしていたのは何が原動力だったんでしょうか?」


「原動力っすか?ん〜」

苦笑いを浮かべた柳くん。確かにこれは難しい質問だ。

だって、どんな状況で有っても失点を許すというのはプロのスポーツ界にとって許せない行為では有るし、それに原動力も何も無いだろう。


きっとアナウンサーも目の前で達成された"快挙"に興奮して、考えるより先に話してしまってるのだと思う。


「俺だけじゃなく、赤星も内海さんもそうですけど。投手として遣るべき事をしたのみですよ。」

「毎打席ヒットなんて打たれたらたまったもんじゃないですからね。」

「いかに抑えにかかるかってのが原動力になってると思います。──でも強いて言うなら。」



「……強いて言うなら?」



「可愛い可愛い"吉瀬ちゃん"に笑顔を届けるためですかね。」

私のあだ名がドームの真ん中で発された瞬間に、主に男性のファン達のモノであろう野太い声が響き渡って思わず耳を塞ぐ。


「うっ、噂の球団スタッフの方ですよね?!」

「そうっすよ。彼女は何があっても、誰に憎まれても俺達を優先して俺達がリーグ優勝と日本一を獲得する事だけを夢見て付いて来てくれてたんです。」


「そんな可愛いスタッフが居るのに、大量失点したからってその試合を諦めるなんて真似は出来ないでしょ?」


「ま、これ以上俺が吉瀬ちゃんの事を話すと面倒臭くなるんで、ここからは天草に渡します。」


と、自分で撒いた種なのに隣の天草に話題を振った柳くんは心なしか、今世紀最大のニヤニヤ顔だ。

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