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逆転満塁ホームラン!
第3章 不吉な予感
マスターが言った言葉は意外そのものだった。
彼と一緒に飲みに行っても、酒癖の悪さなんて見たことが無かったから、私と一緒に居る時の総司のまま新地でも六本木でも銀座でも飲んでると思ってたのに。
「ナイン組の噂みたいな飲み方じゃないよ。だから女の子にも好かれてるし、店にも好かれてる。」
「だけど同性やから分かるねん。ああ、きっとこの人はこの女の子の事を道具としか見てないし、人間としては見てないやろうな。って」
「いやいや、マスター普通に言うてるけど、そういうタイプが一番タチ悪くない?」
「というか……怖い、よな。」
意外な情報だな、本当に。
今すぐにでもラインで、それを小馬鹿にした文章を送ってやりたいけれど今でさえも既読無視されてるんだから、さすがにそれは馬鹿過ぎるだろう、と思い留まった。
「だけどさあ〜、青ちゃんと居る時は全然違うんよ。うちのバイトの子でさえも言うもん。」
「青ちゃんと居る時の総司さんは、人間味が有って良くも悪くも何を考えてるのかすぐに分かるって」
「へえ、そうなんや。」
「お、ちょっと照れてる?」
「ないない!照れては、ないから!」
と言いながらもオーダーした最後の品である、上塩タンをぺろりと食べた私。
タンにはポン酢やろ!と熱弁してた時──そういえば、総司は何がツボに入ったのかしばらく笑い続けてたな。
きっと、彼達はそういう総司を見るのが新鮮だったのかも。
「……青ちゃんは凄いで。あの住友財閥の御曹司を対人間として見れるんやもん。」
「悪い所は悪い、良い所は良い。友達だからとか御曹司だからとか──自分達の関係性や相手のバックボーンを気にせず物事の善悪を判断する。」
「おまけに自分の感情にも相手の出来事にも素直で、女に頼り過ぎてない。傍から見れば、総司君やその家族が同じ様に青ちゃんを"対人間"として見るのは当たり前やわな。」