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逆転満塁ホームラン!
第20章 ネットカフェの魔法
「吉瀬ちゃん今日、何階だべ〜?」
「えっと、8階やったかな?」
悟られない様に……。
人間はウソを付く時、自分の利き腕である方向の斜め上へ目を反らすという話が有る。柳君は洞察力が鋭くて、そういうのに敏感そうだからあえて目を見つめてそう言った。
「お、じゃあ俺達と一緒かあ。どうせならご飯も食べに行く?」
「そんなんアカンよ。今日はナイターやけど明日は祝日やからデーゲームやし……第一、雨で中止なったもんの再試合やねんから、そんなんしてたら負けるで?!」
「再試合かそうじゃねえかは関係ないべ〜」
「ありますっ!再試合の時はデータで見ても何で見てもどの球団もチカラ入ってんのよ。」
「つれねえな。せっかくの流川もまたいつものメンツか。」
大きく腕を上に伸ばしながら、フロントマンから貰ったルームカードを天井めがけて、まるで掲げる様にしている柳君は逢沢君と同じ部屋。
どうせ、ナイン組で試合が終わったらご飯食べて飲みに出掛けるんだろう。この人達の体力は常人離れしているから次の日がナイターであろうがデーゲームであろうが関係無い事は既に知っている。
「でも飯だけでも行かね?」
「あら、何か今日はしつこいね。」
「しつこいって……ただたまには吉瀬ちゃんの愚痴を聞いてやろうっていう俺の優しさなのにな」
「結構です。最近はチワワ先輩とも仲良しやしね。」
というか──チワワ先輩は不器用だけど優しいからなあ。
さすがの私も餓鬼じゃないから彼の行動にムカつく時はあっても、それを引きずる事はない。
はいはい、と背中を叩いてからエレベーターの中に押し込んで笑顔で手を振った。