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逆転満塁ホームラン!
第21章 俺の自慢の嫁
「…つまり、アンタはこれらの名刺全て結婚前のやつで?久しぶりに掃除して捨てようと思って机の上に忘れて放置してた、とそう言いたいんやな?」
「いや、言いたいも何もそうやし。気になるなら店に電話すればええやん、会員番号書いてるんやから最近の履歴とかも調べたら出るやろ。」
悪びれる様子も無く、そんな事を言ってならタバコに火を付けられて──笑顔で許せるほど心は広くない。
「……ッ、あんたっ…」
「何やねん?!結婚前に遊んでた事はお前も知ってるし、それを今更言うた所でどないもなれへんやんけ」
「違うわ!それなら、私にこんな名刺見せた事をまず謝るべきやろ!何開き直っとんねん!」
彼の顔面目掛けてまるでトランプほどの枚数がある名刺を投げつけると、あら綺麗。
赤や黒やピンクの女の名前が桜の様に見えた。
「……お前なあ、落ち着けや。」
「落ち着けって……。」
遠征先でご飯を食べに行って、その後に飲み屋に行ってるであろう予想もしてた。誘われたらホイホイついていくこの人だから、何回かはプロを抱いてる事も勿論。
だけど私の事を全力で愛してくれて、大事にしてくれて、悲しませない様に努力してくれてたからこそ許せたのだ。
でも私の目の前にこんな名刺を置くなんて、悪気が無かったにしろ……それを謝らないなんて。
全く大事にしてくれてないじゃん。
「別にな、野球選手の奥さんになった以上はある程度覚悟なんて出来てんねん。あんたが結婚してから更に色気出たとか何とかでファン増えたりモテたりしてるのも知ってるわ。」
検索ワードには常に【天草流 離婚】【天草流 嫁 なぜ】とか入ってるしね。
祝われてる様で祝われていない結婚なのは重々承知の上だし、それでも流や柳君達が守ってくれてたから何でも良かった。
「…ッもういい、出ていく!」
「はあ?」
「だからっ、出ていく──!」
謝ってくれないなら、出ていってやる。
スマホと財布と車のキーだけを持ち、自分の家を飛び出したのは、三時間前の出来事だった。