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逆転満塁ホームラン!
第21章 俺の自慢の嫁
「つまりお前がワザと机の上に置いた名刺を見て、キレて出てったんだ?」
「おん、そういう事や。」
人に話して楽になったのか、なんか開き直ってる雰囲気が有る天草の話しは、本当に馬鹿そのものだった。
要約すると、こうだ。
──浮気とか不倫のワイドショーを見て、いつも『私だって野球選手の奥さんやしある程度覚悟してるけどなあ。アンタの場合は本命と遊びは分けるやろうし』といわれるのが嫌だった。
ヤキモチを妬いて欲しかった天草は、わざと昔使ってたスーツやカバンの中を漁ったり、球団の独身組が持ってる名刺をかき集め、机の上に置いた、と。
【俺はお前だけやで。】とか甘いモードになるのを計算してたけど、思いの外"覚悟が決まってなかった吉瀬ちゃん"はキレて出て行ってしまい、どこに居るのか分からない。
「……はあ、お前何でそんな事するべ?」
「んなもん……しゃーないやんけ。」
「あんなあ、どんだけ吉瀬ちゃんと一緒に居るんだよ?あの子はプライドが高いから素直じゃないけど、本当はヤキモチ妬きなんだよ。」
「でも、お前が隠し通してくれるならお前のことを信じよう!とかそういう風に思ってるだけ、の話し。」
「心配しなくても遠征に行けばあの子の心の中はお前で沢山になってる。」
「というか二人とも不器用過ぎだろ。結婚してまで高校生みたいな恋愛してんの止めてくれよな。」
……まあ、夫婦になってからと言うもの、あんまりこういう喧嘩はしてるの見た事ないけど。
言い合いなら毎日の様にしてるけど、それは何かが発端になってと言うよりかは、もう猫同士のじゃれ合いみたいなモンだ。つまり今回とはワケが違う。
「じゃあこれって俺が悪いん?」
「まあ8割位はお前が悪い。2割は素直になれなかった吉瀬ちゃんも悪い。」
「でもお前も男なんだからさ、あの子の旦那なんだし。天草里奈っつー女は不器用だから誰かを同時に愛すとか絶対無理で…」
「だからこそいつもお前に全力だろ?その意味を理解して、信じてあげるべきだったな。そんなワケの分からない罠に掛けるみたいなことせずに。」
中途半端な駆け引きをした途端に終わってしまうのが男と女の性だ。コイツも今まで遊んできた女と離れた理由は駆け引きされるのが面倒だったから、ってのがほとんどなのに。