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逆転満塁ホームラン!
第3章 不吉な予感
少しずつエレベーターが上に上がるにつれて、ユーロビートの様な音楽が聞こえてくる。
まっっっったく総司と飲みに行く飲み屋とは違うな、というのが入店してもいない私の第一印象だ。
総司と行くのは、山崎・イワノ・有馬と云った所謂昔ながらの老舗クラブ。
大体ママ達が複数人居て結構な年齢だし、チーママも若くて26歳くらいだろう。平均年齢は30歳を超えていると思う。
総司がよく慕っている京子さんと云う美人さんも、クラブ山崎のチーママで、彼女のヘルプの女の子達は皆24、25の私とあまり年齢の変わらない子達。
だけれど、素直で色気があって素敵そのもの。
総司がわざわざ大阪出張の度に、京子さんのおすすめのヘルプの子達を連れて同伴してあげてる意味が私にも分かるもん。
──まあ、それに慣れてるからなのかな。
初対面のあの女達がどうも可愛げのない子達だったからなのかな。
どっちが主な理由かは分からないけれど、少し心がウキウキしていたのは嘘みたいに気持ちは静まり返っていた。
だけど、エレベーターの扉は私の気持ちと反して何処も同じ様な機械音を響かせてから左右に離れていく。
「いらっしゃいませ!!」
ドカン、と衝撃が走った。
店内は赤色と黒色のコラボがバッチリ決まっていて、見渡す限り大きなシャンデリアが四つほどある。
しかもエレベーター前には金色のペガサスの置物なんて……うわあ、さすがだな。という感想しか出てこなかった。
いかにも成金が好みそうな店内で、イヤモニを付けた私より二つほど上っぽい男の子が深く一礼をしてから、顔を上げる。
つられる様にして、私も彼の目を見た。
「お待ちしておりました、お連れ様がお待ちの……蒼井里奈さんでお間違いないでしょうか?」
「ハッ……ハイッ!」
なんで本名を知られてるんだろう。と思ったのもつかの間、多分マスターが私が気後れしない様に色々と手を回してくれたのだろう。
要らないお節介だな、これは。