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逆転満塁ホームラン!
第21章 俺の自慢の嫁
『──ん〜、天草さん。まずは自分がしてしまった事、例えお店に行ってたとしても行ってなかったとしても、人の気持ちを試す様な事をしたのは悪いと思っているんですよね?』
ごほんっと咳払いをしてから、まるで幼稚園児に説くほどの優しい声色で、そう返事をした安藤さんは50代半ばくらいかな?目尻のシワが印象的だ。
「はい、それはホンマに悪かったって思ってます。」
『でもヤキモチを妬いて欲しかったから、そんな事をしてしまったんですよね?それって、何でヤキモチを妬いて欲しかったんでしょうか?』
「え、何でって……」
眉間にシワを寄せて、数秒ほど考えている。
「スキやから、じゃないですか?アホらしいけど本気でスキになった相手には愛されたいと思うのが普通でしょ?」
「俺は嫁が浮気してたらめっちゃイヤです。他の男にあいつの良い所を知られるってだけでもイヤやのに。」
「でもアイツは、俺が野球選手やから遠征先で遊ぶもんやと勝手に思って、勝手に根性キメてもうたんです。それって俺だけがスキみたいじゃないですか?それが嫌で……ホンマに女々しいですけど俺の事をスキかどうか、それを確かめたかったんやと思います。」
彼なりの言葉で、何となく皆に意味が分かるレベルで、なんとも可愛らしい事を言った天草流と云う世界のレッドドラゴンと大型契約を結んだ大スター。
そんな大スターが国民が見守るテレビ中継の会見場で、こんな必死に何とも陳腐な揉め事で悩みきっているんだから、バカの極みとしかいいようがない。
きっと今なら「やっぱりアイツはアホやった」というネタで柳君や内海さんと5時間はお酒が飲める。