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逆転満塁ホームラン!
第21章 俺の自慢の嫁
すっかり見慣れているはずのロッカールームだけど、流は野球と家族を別にして考えている。
だから、どことなく久しぶりな感じがした。
「……うちの犬がご迷惑をおかけしました。」
グイッと頭を無理矢理持って、下げさせるとキツイ目付きで睨まれる。社会人なんだから、あんな場面でイキナリ恋愛相談し出した自分の行動を恥じろっつーの。
「はあ。教育足りてないんじゃね?」
「ですよね…。」
チワワ先輩の一言は、重く胸にのしかかる。
「でもまっ、こいつの性格ならきっとお前にも相談してないだろうなって想像してたし。」
「喧嘩したってのは聞いてたし。」
「想像の範囲内と言えば範囲内だわ。」
「……チワ、じゃない千葉さん。」
「本人目の前にして小動物のあだ名で呼ぶな。」
呆れ返っている第一マネージャーさんは、スマホを弄りながら『後は任せたぞ、天草里奈』と何故かフルネームで私の名前を呼んでから部屋を後にした。
ロッカールームには私と流の二人きり。
現役バリバリで働いていた時は、他に絶対誰かが居たからこの部屋に二人きりになる事は無かった。
それが結婚して、しかも…喧嘩した後の今二人きりなんて、つくづく神様は意地悪をするんだなあと思ってみる。
「なあ」
「ん?」
ショボンとしている旦那さん。
きっと呆れられながらもチワワ先輩だけじゃなく、義母さんや義父さんに散々嫌味を言われたんだろう。
まあ、千里さんはそこまで口が達者ではなく黙って見守るタイプの人だけど義母さんは……マジでキツイからな。
大阪のおばちゃんそのものだし、何気にアカン垂れな所がある天草にとってはいつまで経っても怖い存在の人、なのかもしれない。