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逆転満塁ホームラン!
第3章 不吉な予感
ぼーっとする私を、とりあえず誕生日席に座らせた黒服は空いているグラスや缶を手際良く下げて部屋を出ていく。
この二人に対して女の子は合計八人、二人の子が潰れてしまっているから六人分のド派手な視線が私に集まってる事になる。
なんなら、今の今まで気持ち良く歌ってたであろうプラネタリウムも消えてるし。
うわあ、これは25年間生きてきて一番居心地の悪い空間かもしれない。
「うぇい、吉瀬ちゃん。とりあえず何飲む?」
「あっ、あっ……ええっとビール貰えますか。」
テンションがド高い柳くんのペースにまんまと乗せられてそのまま注いでもらう。
「じゃあ皆で──今日のウィングスの勝ちに再度乾杯しちゃいますか!……かんぱーい!!」
「「かんぱーい!」」
「……頂きますっ」
蚊の泣く様な声で、そう呟いてから一口だけ体内に冷たいホップを注ぐ。
「ねえ恭平くん、この子だれ?」
「んー?この子はね、吉瀬ちゃんって言って甲子園球場で働いてるスタッフさんだべ。」
「ふうん。」
敵対心丸出しで私に視線を送るのは日本の三番にもたれかかっている綺麗な女性。
ハイトーンの長髪はとても綺麗にセットされていて、多分顔の大きさは安室ちゃんくらいかな。
猫の様な顔立ちと、見るからにスタイルの良さそうな雰囲気は野球選手との飲み会に居て当たり前な風貌だ。
代わって私は身長155センチのちんちくりん、良い所と言えば良くも悪くも自分の感情に素直な所と──。
後は、住友総司っていう男の大親友な所くらいだろう。
あなたとは立場が違う事は重々理解している、だから睨むのは辞めて!ほんとお願い!……ああ、声に出して言えたらどれだけ楽か。
自分のそんな気持ちを誤魔化す様に、グラスに注がれたビールをクイッと軽く一気した。