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逆転満塁ホームラン!
第3章 不吉な予感
「お前……」
「何ですか、ってかもう満足でしょ?野球の話する割に、自分達に気付いてない見た目若そうで中身オッサンの私にただ単に興味を持って、ここに呼んだだけの話ちゃいます?」
「それなら、もう阪神が大敗した事であたしのメンタルは充分あんた達にヤラレましたし、ここ出たいんですけど」
これは切実な願いだった。
あたしも高卒だけどバカじゃない、本当のバカなら七年も気分屋で有名な青山先生の秘書は務まってなかったに決まってる。
多分、この天草流って男は──。
自分に気付かない事も、ナイン組が嫌いな事も、一人でカウンターに座ってビール飲みながら議員秘書としての愚痴をこぼす場面を見る事も……
もっと言うならば、その負けん気の強さが仕事やテストの結果で現れてる事も……
全てが初体験で、そんな女が自分の後輩の店の常連だったから好奇心で、この店に呼んだんだろう。
ましてや、今日の昼間に私達は顔を合わせて話もしている。─正式には、喧嘩を売られた、っていう方が正しいのかもだけど。
だけど、どっちにしろそんな理由で私をここに呼び出したのなら、もう話もしたし一緒に飲んだし、私がここを出ても大丈夫なはずだ。
「貴方達も明日はナイターと云えど試合でしょ?いくら相手が弱小の阪神でも、何があるか分かりませんし早く帰ったらどうですか?」
「………おい」
「あたしは帰ります。球団スタッフって何気に忙しいんで。じゃあ」
言って、煙草をポケットに入れてから立ち上がろうとした時だった。
もの凄い力で腕を引っ張られ、今度は崩れ落ちる形でまた同じ場所に座らされたのだ。