この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
逆転満塁ホームラン!
第4章 深夜の炭水化物
運転手さんから、試合お疲れ様でした。と声を掛けられた天草は律儀に頭を下げてからフロントでチェックイン作業をすると、手慣れた様にソファーで掛けて待つ私にカードキィを渡してきた。
「俺は6105、あんたは6106」
「あ、隣なん?」
「そ。ミサトの予定やったし、アイツなら派手だしバレかねへんから隣でさくっと移動出来る様にってことで」
「へえ。……そんなに一緒に居たくないん?あの子と」
「あの子とってか、女と。」
女性不信ってやつか?
まあ、こいつほどにも成ると近づいて来る子達が金目当てか野球選手の妻というレッテル目当てに見えても仕方ないんだろう。
部屋に上がるのは面倒臭い、という事で私達は荷物をそのまま持って横ちゃんラーメンへと向かった。
話しによるとフロントマンがマネージャーからもらった天草の服を部屋に入れてくれてるらしい。
どんだけANAクラウンを使ってるんだろう、セリーグ選手の移動はほぼ新幹線なはずだけど、マイルが貯まるシステムが有れば直ぐにハワイ往復位行けるだろうな。
「そーいえば、マスクは?しなくていける?」
「おん。」
「余裕やな、大スターやのに。」
「俺らはユニフォーム着てなかったら案外バレない。ま、一応ダテメガネはかけてるし、大丈夫やろ。」
「そう?……まあまあ、なんしか横ちゃんラーメン楽しみにしててよ。醤油ベースのアッサリさが飲んだ後の締めには最高やからさ」
なんて思ってたら、ああ……自然に頬が緩む。
クソみたいな上司だな、と友達に言われた事もある前職場の大大大教祖である青山先生。
彼と私は、ある意味7年の付き合いだし、友達みたいな部分も有った。
よく、飲んだ後に二人で大物議員の愚痴を言いながら横ちゃんラーメンでたらふく食べたりした事を思い出す。
あの時はあの時で楽しかった。
私が──安藤先生の秘書になりたい、なんて言わなければまだあの幸せは続いてたのかな。