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逆転満塁ホームラン!
第4章 深夜の炭水化物


──ものの30分程度だった。

あれほど夜中の炭水化物を渋っていた天草も、いざ露店の前に立ち匂いを嗅ぐと調子に乗って半チャンセットを頼みだして、大食いファイターの様な速さでぺろり、と食べ上げた。

私は普通サイズのラーメンだったけど『食べるの遅いねん』っていう輩でしかない事を言われたと思えば、勝手に二口ほど食べられたり、と散々だ。


軽くマスターの横チャンに挨拶をして以降、何も話しはしなかった。勿論、マスターも天草についてはツッコんでこないし。

お酒を飲む元気もない。


二人で背中並べて水飲みながら、ラーメンをすすってるんだから、大スターとの食事とは到底思えない。

お腹が一杯になって眠くなってきた私は目をこすりながら天草に声を掛けた。

エレベーター待ちしてるのは私達しか居ない。──けど、当たり前か。ド平日のこの時間なんだし。


「美味しかったやろ?」

「まあまあやな」

「はっ、よく言えたもんやな。あんな速くにペロリといっちゃった子が」

「ああ?お前こそ、あんなんばっかり食ってたらそりゃ太るわな。」


「なっ……!別に太ってはないから!標準やし?!」

「俺はモデルみたいな奴しか見てきてないから、お前が世間一般では標準でも俺からしたら『ちんちくりん』やねん。」

勝ち誇った様な顔をする天草に軽くケツキックをかましてから、さっさと乗り込んで六階を押した。

「ホンッマに憎まれ口しか叩かれへん奴やわ。それなら私じゃなくてあの店の女の子を連れてきたら良かったやろ、素直じゃないのはどっちやねん」

「はあ?お前が隣におったからやんけ」


「あんたが隣に来た、無理矢理腕を持った、の間違いやろ!」

「このっ、クソアマが」


「はいい?!……ちょっ、天草あ!お前ホンマあたしが黙ってるからって…今度こそシバく!」

振り上げた手に大きく笑いながら、長い足で颯爽と自らの部屋に向うため廊下を歩く彼の背中。

プロのスポーツ選手らしく鍛え上げられた全身と、大きな肩幅はやっぱり男らしい──というか、そりゃミサトちゃんもあんなに本気になるよな、って感じだわ。


性格は腐ってるけど、顔とスタイルは抜群やもん。

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