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逆転満塁ホームラン!
第4章 深夜の炭水化物
「……うるさくしてゴメン」
「ん。」
「……ん、って。明日ナイターと云えど試合やろ?自分の部屋帰って寝たらどう?もう私も電話せえへんし」
「ああ?お前、散々俺の睡眠邪魔しておいてイキナリそれかよ。」
「いやっ、苦情言いに来ただけやろ?もう謝ったし、マジで悪いとおもってるし……てか第一、あんたの体力心配して早く帰りって言ってるだけやねんけどな。」
「……チッ」
──今、舌打ちしたよね?コイツ。
自分の耳を疑いそうになったけど、こんな場面で舌打ちと聞き間違いをするほどネガティブではない。
ひえええ、と漫画のような声を出したい気分だ。
人の部屋に勝手に入ってきて、煙草吸って、ほら今だって勝手に残りのアクエリアス飲み干して……舌打ちをするのは、きっと私の方だろう。
「……んやねん、そんなチラチラ人の顔見やがって。俺の顔に何か付いてんのか?」
「──いや、そういうワケじゃないんやけど」
「じゃあなんやねん、見とれてんのか?」
「はあ?」
「ははっ、んな顔して否定すんなや」
子供のように笑った彼は、徐ろに立ち上がり部屋をクルリと見回した。
「俺の部屋よりちょっとデカイ」
「そ、そうなんや。」
「……へえ、なんか損した気分」
「何なら交換する?お風呂しか使ってないし」
バスローブは使ってるけど……天草も自分の部屋に有ったと思われるバスローブを着てるし別に問題ないだろう。
それなのに、せっかくの優しさを「いいわ。」とだけ返した彼は、今度こそ他人のベッドに勝手に寝転がる。
「俺もこの部屋で寝ようかな」
「じゃああたし、あんたの部屋行くから」
「はあ?」
「はあ?じゃないやん。アンタ、他所の女と一緒に寝たくないんやろ?私も他所の男と寝たくないし。てか一緒の部屋で寝るとか話し違うし」
「……。」
「お前ってさ」
「なに?」
枕を二つ使い、かなり頭を高くした彼に横目で見られると嫌でも……胸がドキッとする。
きっと部屋の照明のせいでもあるだろう。とか強がるけれど、それだけじゃない。
この天草流という男の、色っぽい少し低い声……そして整い過ぎてる位に端正な顔立ち……濡れた黒髪……ああ、コイツの全てが女泣かせなんだ、と冷静に心の中でそう思った。