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逆転満塁ホームラン!
第4章 深夜の炭水化物
「実際、安藤のクソジジイの秘書にマジで成りたかったん?」
「……何よ、いきなり。何でそんなこと聞くん?」
「いや、質問してるの俺やねんけど。」
冗談も何も含まれていない、まっすぐな眼差しは何処か怖さも覚えてしまう。
顔が綺麗な男の真顔ってこんなに怖いんだ……。
「まあ」
「まあ?」
「正直言うなら……そこまで、やったかもしれん。」
「ただ出世欲というか、青山先生の側でこれだけやってきたんやから次はもっと大物の側で働きたい。ってそう思っただけ」
「じゃあ安藤の政策や人柄やそんなんに惚れて、一緒に頑張りたいとかそういう動機じゃないってこと?」
「そうね。」
青山先生は、何度も言うようにカナリの気分屋で調子の良い人だったけど悪い人ではなかった。
ただ……私が自分の欲に従っただけだ。まあ、結局従ったが故に契約社員……つまりはアルバイトで甲子園で働く羽目になったんだけどさ。
天草が半分も吸っていない私の煙草を灰皿に置いてあるのを見つけて、少しだけイラッとしながら新しい自分の一本を手に取り、火を付けた。
「じゃあ別に安藤じゃなくても良いんやろ。」
「そう……やなあ。──でも今はたとえ一ヶ月でもあの汚い世界から離れてみて、戻りたいとは思わないかも」
「政治の世界に?」
「うん。アルバイトで総司に口利いてもらって、結局私は何もせずに甲子園で働いてるけどさ。」
「同じ年の子達とワーワー言いながら時給計算して仕事するのも楽しいし、ユニフォーム着て『阪神今日は買ってほしいなあ!』って無邪気に言うチビッコ達にサンプリング配るのも楽しいし」
「今、愛人契約無しで安藤先生の秘書になるか?って効かれたら……即答では無いなと思うねん。」
「……。」
「まあ、こんなことアンタに話した所で何もないんやけどさ」
と言いながら出た苦笑いは本当に心の底からの感情だと思う。否定も肯定もしていない自分のまっすぐな気持ち。