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逆転満塁ホームラン!
第5章 急な悪魔の囁き
「えっと、仕事内容は分かったんですけど。……何で私なんですか?」
「だから僕もさ!今朝、上司からその話しが回って来た時に蒼井ちゃんはトレーナーの免許もなければ知識もないのに、何でだろう?と思って、それで電話したんだよ」
「……。」
「ほら、バックルーム専属って普通は男が成るものだし、女の子だったとしてもオバサンとか球団関係者とかだからさ。」
「──だけどまさか、コネ入社させてくれたのが住友財閥の人だったなんて。そこに驚きだよ」
「……、」
球場スタッフとして与えられる仕事の中だったら勿論、花形だろう。
だってビールの売り子さんやグッズの売り子さん達は、基本的に野球選手が好きだし、何なら合コンのセッティングをしてる子達も居るくらいだ。
それを、そんな努力も無しに近くに居れる……となったら皆が移動したがる場所なのは当たり前。こんなこと、それこそ小学三年生の子でも分かる話し。
「ねっ、蒼井ちゃん。ウィングスに知り合いが居るの?」
「知り合いっていうか……」
言ってすぐに気付いた。
──そういうことか。
……頭に浮かぶのは意地の悪そうな天草の笑顔。
アイツなら脳内は小学生レベルだし、嫌いだと言っている球団に面白半分で入れ込ませることを考えなくはない。
というか、他にウィングスで知り合いなんて居ないしWWCの本社にも居ないとなれば、そんな口を効くのは天草流の一人しか居ないだろう。
総司は……多分、私の勘だけどWWC系列に私を入れることは無い。
あそこは給料が高い分、男の子達も夜の麻布などで飲み歩くチャラい子達が多いし、何より私がここまで嫌っている球団だもん。
そこにわざわざ顔を出させるほど、あたしの大好きな彼は性格が悪くない。
一番性格が悪いのは──興味本位で、人の嫌がる顔を見たがるタイプの『大スター様』だろう。
近藤さんの興奮気味の声なんて半分は聞こえなくなってから、はあ。とちいさくため息をついた。