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逆転満塁ホームラン!
第5章 急な悪魔の囁き

「……なるほどねえ!つまり、蒼井ちゃんは天草に喧嘩を売った訳だ?」

「いや、売ってないですけど。」

いつかのあの日の様にスピーカーにしながら、さっさと用意をした私。

鏡に映っているのは寝起き独特のむくんだ顔ではなく、眉毛も口紅もバッチリな蒼井里奈。我ながらちゃんと化粧をしたら悪くは無い顔立ちをしてると思う。

問題は背の低さと体型の垢抜けなさ、だろう。どこか昭和っぽい体型というか……いや、昭和ガール達でさえも私より足が長かったりするから、ただ単に幼児体系なだけなんだけど。


「でもそういうことなら、まあ安心かな」

「安心ですか?」


「うん。やっぱりウィングスって色々とチャラい噂も聞くしさ。ただ単に遊ばれるだけなら僕もバックルームに行かすのは心配だったけど──今の話しを聞いてる限り、恋愛感情とかではなくて面白がって蒼井ちゃんを呼んだんだと思うし」

「第一ウィングスには凄腕マネージャーって言われてる"チワワ"が居るしね。」


チワワ……

ああ、確か食堂で柳くんが出してた名前だ。それはチワワが俺と天草のワガママを勘違いしただけだあトカ何とか言ってた様な気もする。

「変な名前ですね。」


「千葉ワタミって名前なんだよ、だからチワワ。現に顔も童顔で男にしては華奢だからチワワに似てるしね」

「へえ、じゃあぼちぼちイケメンってことですか?」


「うん。年齢も30丁度だから良い具合だと思うよ。仕事も出来るしイケメンだし人当たりも良いし」


「まあ、あのドケチなWWCで何年も第一マネージャーとして良い給料貰って……いや、それ以前に誰が抜けようが辞めようが一人であれだけの我儘王子達の為に球団を回してきたんだから凄いと思うよ。」


「へえ。」


「だから、そこは安心して良いんじゃない?チワワがちゃんとしてくれると思うし。」

近藤さんの話し方的に、私が今日もいつも通りサンプリングを配るってことは、ほぼ有り得ないんだと思う。

もうバックルームに入ることが当たり前みたいになってるし、何なら総司と一緒で私に拒否権は無いってやつだろう。

マリリンモンローが煙草を吹かしているおちゃらけたプリントが施された黒色のTシャツに、これまた真っ黒のスキニージーンズを合わせてみた。

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