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逆転満塁ホームラン!
第6章 チワワの逆襲
「おー!!吉瀬ちゃん!!!」
私を見つけるなり……いや、きっと待ってくれていたんだろう。
待ち構えていた内海さんはバスタオルを外国人選手に渡すと私の事を優しく抱きしめる。
「うわっ……う、内海さんっ!」
「え?何、照れちゃってんの?吉瀬ちゃんらしくないじゃん。」
「ちょっ、もう良いですから内海さん。自己紹介させるんで一回離れてくださいよ。」
「ぁあ?おめえ、柳。俺がこの子の事を始めに吉瀬ちゃんって呼んだんだし、話しかけたんだからな。お前こそ気安く腕なんか触ってんじゃねえよ!」
えんがちょっ!というドコか古臭い言葉を発しながら、私と柳君を引き離した内海さんは満足そう。
そして、柳君の内海さんに対する当たりのキツさには驚きだ。いくらイジられキャラとは云え、内海さんは巨人から移籍してきた大先輩。
ニコニコと笑いながら流している彼の懐の大きさには本当、感動してぐうの音も出なかった。
「おーい、お前ら」
「この子がさっきチワワが言ってた、新人のバックルームスタッフ、吉瀬ちゃん」
「本名は蒼井里奈ちゃん。吉瀬美智子に何となく似てるから俺が吉瀬ちゃんって名付けたんだけど、まあお前達も呼び方分からなかったら吉瀬ちゃんで良いから!」
セラミックっぽくないナチュラルで白い歯を見せながら笑う内海さんは、ああ何となく頼りになりそうだ。
奥さんは気が強い事で知られているらしいし、そこまで見境無く女を食べる様な真似は怖くて出来ないだろう。
「あっあの……蒼井里奈です、25歳です。」
「球場で働き出して一ヶ月でバックルームに入る事になったので右も左も分からない事だらけなんですけど……精一杯、ご迷惑お掛けしない様に頑張りますので、宜しくお願いします!」
挨拶はとても大事。
こんなの幼稚園の時くらいから親に言われて、誰もが育つ事だ。
色々と思う事は沢山あるけれど、それを隠す様にして大きな声でそう言うと、深く頭を下げた私。
ほどなくして体育会系独特の揃った『お願いしまーす』という返事が返ってきた。