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逆転満塁ホームラン!
第7章 出会いの人員不足
「お、来た来た。ウィングスの姫ちゃんやん?」
関西弁と似ているけれど、やっぱりイントネーションは違うんだな。と冷静に判断しながら頭を下げる。
「はじめまして、今日から三日間バックルームスタッフとして出入りさせてもらうことになりました蒼井里奈です。宜しくお願いします!」
「知ってるよ、吉瀬ちゃんでしょ?」
優しそうな笑顔で手を振りながら、もう半分芸名になりつつある【吉瀬ちゃん】呼び、をここでも聞かせようとしてくるのは広島の先発ピッチャーとして大活躍してる松本星矢君だった。
「あ、その呼び方は……ウィングスの方達が……」
「それも聞いてる。天草に目付けられて甲子園スタッフなのに阪神のバックルーム入りは一度もした事が無い哀れな女の子だって。」
「はっ、ははっ……」
確かに阪神の不動の四番、福谷さんを私は結構推している。だからこそ、阪神のバックルームに入った事がないという既成事実は見方を変えれば哀れなのかもしれない。
「ごめんね、阪神側じゃなくて」
「いや、そういうのは仕事なんで大丈夫です!」
「松本さん、この子今"仕事なんで"って言いましたよ。何だあそれ、おもしろい子っすね」
「だろ?俺も柳から聞いてたけん。面白いけど変な子で気が強いからしょっちゅう天草と喧嘩してるって」
「へえ、あの天草さんとっすか?」
「そう。あの天草と。」
どの天草だよ。とツッコミたい気持ちを抑えて、地面に無造作に置かれている使用済みのバスタオルをかき集めた。
「すげえっすね、天草さんと対等に喧嘩出来るのって男でもあんまり居ないのに」
「まあアイツは天才だからな。無茶に色々言えないし高校球児の時からブイブイ言わせて喧嘩も無双だったし」
「そうなんですか?」
思わず、松本さんともう一人の若い子の会話に聞き返してしまった。直ぐに口元を手で抑えるけど、いいよ。という優しい笑顔にコロリ、と微笑み返してしまう。