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いつかの春に君と
第5章 いつかの春に君と
「…ふ…ん。…本当に孤児院か?
まるでイギリスの貴族の子弟の寄宿学校みたいだな」
カーキ色の制服に身を包んだGHQの教育局の役人はレイバンのサングラスを取ると青い目を見開き、孤児院の部屋を無遠慮に歩き回った。
鬼塚と郁未は並んで彼の後を歩く。
「はい。英国のパブリックスクールをモデルに改築しました。
寄宿舎と学校が一体となった行き届いた温かみのある学校を作りたいのです」
郁未が流暢な英語で答える。
郁未は中等部の時に英国のラグビー校に短期留学していたことがあり、パブリックスクールの内部には熟知していたのだ。

役人は宿舎の隣の仮教室で勉強する子どもたちを眺める。
子ども達は真新しい白いシャツに紺色のズボン、女子は紺色のスカート、そして学校の校章を象ったエンブレムが付いた紺色の上着を着ている。
真っ白なハイソックスに黒い革靴は綺麗に磨き上げられていた。
髪はこざっぱりと切り揃えられ、女子は可愛らしく結い上げられている。
子どもたちの身なりや髪型を整えることは小春が優しく指導したのだ。
子どもたちは血色も良く健やかそうな表情をしていて、行儀も良い。

役人は唇を歪めた。
「贅沢な格好だな…。孤児の癖に…。敗戦国の子どもには見えんぞ。まるでブルジョワの子どもたちだ」

鬼塚は眉を顰めた。
郁未がすかさず笑顔で説明をする。
「貧すれば鈍するとは日本の諺ですが、着るものはその人間を形作ります。衣服は品格です。
私たちは子どもは国の宝だと思っています。
子どもの教育は何より大切です。
…その点、欧米の学校システムは素晴らしい。
美しい学校、美しい制服、優秀な教師、優れた教材、豊かな環境…。
それを是非日本の教育現場に取り入れたかったのです」
「…ふむ…。まあ、そうだな。欧米の教育は世界一だ」
白人の教育機関を褒められた役人は、機嫌良さげに眼を細めた。

上機嫌で教室を歩き回る役人に、不機嫌そうに唇を歪める鬼塚に郁未はそっと耳打ちした。
「いい?今日だけは堪えてよ。勘に触ることを言われても、突っかかったり手を出したりしないでよ」
「…分かってる…」
鬼塚はぶすりと呟いた


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