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いつかの春に君と
第2章 花の名残に君を想う
「もう…無理だよ…鬼塚くん…先に行って…」
同期で同室の嵯峨郁未が泣きべそをかきながら、地面に座り込んでしまった。
他の生徒はとっくに次の障害物に向かっている。
残されたのは鬼塚と郁未だけであった。
鬼塚は郁未の背嚢も背負い、彼の手を引き上げた。
「泣くな。嵯峨。泣く元気があるなら立て」
「だって…靴擦れ出来ちゃったし…」
少女のように愛らしい唇をへの字に曲げて泣き言を訴える。
鬼塚は淡々と諭す。
「…今日の軍事教練の結果は父兄に通達されるって教官が言っていただろう?
いいのか?脱落者名簿に入っても」
郁未は不承不承起き上がり、弱々しく走り出す。
「頑張れ」
鬼塚は郁未を小さく励ますと、再び走り出した。
…案の定、最終走者になった二人には、教官の雷が落ちた。
「貴様ら、弛んどるぞ!ここが戦場なら貴様らはとっくにあの世行きだ。
いや、貴様らだけではない。
貴様らに命を預けていた何百人もの兵士の命を失うことになるのだ。貴様らは将来の大日本帝国の将校なのだぞ。
自覚と責任が足りん。明日までに反省文を提出しろ!」
…当然夕食は抜きになった。
郁未は見る見る内に絶望的な表情になり、鬼塚を見上げた。
同期で同室の嵯峨郁未が泣きべそをかきながら、地面に座り込んでしまった。
他の生徒はとっくに次の障害物に向かっている。
残されたのは鬼塚と郁未だけであった。
鬼塚は郁未の背嚢も背負い、彼の手を引き上げた。
「泣くな。嵯峨。泣く元気があるなら立て」
「だって…靴擦れ出来ちゃったし…」
少女のように愛らしい唇をへの字に曲げて泣き言を訴える。
鬼塚は淡々と諭す。
「…今日の軍事教練の結果は父兄に通達されるって教官が言っていただろう?
いいのか?脱落者名簿に入っても」
郁未は不承不承起き上がり、弱々しく走り出す。
「頑張れ」
鬼塚は郁未を小さく励ますと、再び走り出した。
…案の定、最終走者になった二人には、教官の雷が落ちた。
「貴様ら、弛んどるぞ!ここが戦場なら貴様らはとっくにあの世行きだ。
いや、貴様らだけではない。
貴様らに命を預けていた何百人もの兵士の命を失うことになるのだ。貴様らは将来の大日本帝国の将校なのだぞ。
自覚と責任が足りん。明日までに反省文を提出しろ!」
…当然夕食は抜きになった。
郁未は見る見る内に絶望的な表情になり、鬼塚を見上げた。