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two roses & a lily
第9章 退行の解除


「うぅ、ジョアンナ、ジョアンナ。」

ジョンが泣き始めた。

「ジョン、演じても泣いてもジョアンナは還ってこない。君はジョアンナの為に何が出来るんだ?」

「ジョアンナの為に、俺は医者になる。」

「そうだ、そうだろう。それは、君自身が決めたことだ。その志が素晴らしいと僕は思うよ。」

「うぅ、俺は大学に行く。」

「君は今、何歳だ?」

「17」

「本当にそうだろうか?」

「…………」

「何故君はそこに留まっている。何かあるのか?君は医学部に入った。救命講座に躓いたことから逃げたいのか?医学部に入ったことで目標を見失ったか?」

「俺は、、、医者になりたい。」

「そうだろう。そして、ボブという親友を得た。」

「親友、、、ボブ。」

「退行治療は辛いものだと話してあったはずだ。初回から逃げているようじゃ、治療は続けられないよ?」

「いやだ、治療を受けて、俺は、医者になる。」

「そうだよな。ならば、逃げてはいけない。これからは、退行状態を解除してからカウンセリングを終了するよ。いいね。」

「はい。」

「ジョン、君は、今、何歳だ。」

「もうすぐ19になります。」

「今の年齢の記憶はあるか?」

「はい、救命講座に失敗して、ボブの勧めでカールの、あなたの治療を受けています。」

「そうだね。治療の為に、君の過去を探っていく、そのなかで君の記憶を遡る。
でも、そこに逃げちゃダメなんだ。」

「はい。」

ジョンは静かに涙していた。

「他に何か質問は?」

「sexで生計をたてることは良くないことなのか?」

「善悪は決められない。ジョンがそれで生きてきたことを否定するつもりもない。
だが、sexは愛の行為だと思うから、それで生計をたてるという選択肢しかなかったという状況は大変だったと思うし、そんな社会を良くしなきゃならないとは思うね。」

「ああ。」

「ただ、君がこれから、その選択をするのは愚かだと思うよ。」

「それは、したくない。」

「ならば、いいんじゃないか?」

「ああ。」

「他に質問はあるか?」

「ない。」

「じゃあ、起きなさい。」

カールは睡眠導入剤を飲ませることなくジョンを起こした。


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