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two roses & a lily
第9章 退行の解除
「じゃあジョアンナとしてヒューと関係を持っていたのか?」
「結果的にはそうだね。」
「そんなことをして自分が辛くないのか?」
「生きていくにはsexは必要なんだ。客に合わせた方が楽だろう?それだけじゃダメなのか?」
「生きていく為に必要。それは仕方ないことだったかもしれない。
だが、死んだ妹のふりをして辛くなかったかと聞いているんだ。」
ジョンは歯医者にあるような椅子に座らされ、体全体を斜めに倒してリラックスした状態でカウンセリングを受けている。
ただ、急に暴れ出すことを想定して、手足は緩い輪の中に通され、腹にも緩めにベルトをして、軽く椅子に拘束されていた。
睡眠薬といっても、カウンセリングがあるので弱い眠気薬を飲んでいるのだが、感情の乏しいジョンはグッタリして椅子に凭れ、寝言のように話している。
だけど、カールの『死んだ妹』という言葉に手足の輪が突っ張るほど反応して起き上がろうとした。
「ジョアンナ、死んだ妹。」
声を荒げて繰り返した。
「そうだ、たかがsexに死んだ妹を演じる気分はどうだったんだと聞いている。」
一昨日にはあっさり状況把握と言って終わったジョンの酒場での仕事、今日は何故、妹の死という起因の根幹に触れてまで質問するのだろう。カールの意図が読めず不安になるが、声を潜めてじっと聞いていた。
「死んだ…妹……ジョアンナを、、演じる気分。」
身を捩るようにしながらジョンが唸りだした。
「ヒュー、ジョアンナを抱いて?
ジョアンナはここにいるよ?」
ジョンは優しい声色で囁いた。
行為の最中に遡ったように同じ台詞を繰り返す。
まさかやはり人格は分裂していたのか?
居たたまれない気持ちになりながらも二人の様子を見届ける。
「ジョアンナなのか?」
カールも同じことを思ったのか、ジョンにジョアンナと呼び掛ける。
「違うよ、ヒュー。
ジョンだ。だけどジョアンナとシてるみたいだろ?
俺も、、、ジョアンナが俺の中で生きている気分になるから、
気分が盛り上がるだろ?
ジョアンナと呼んでくれ。」
やはり人格ではないのか、ジョンは自分をジョンと認めていた。
「そんなことをしても、ジョアンナは生き返らない。
俺はジョンとしたいんだぜ。」
カールはヒューを演じつつ、ジョンがジョアンナを演じることを否定した。