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朧_ 霞む 愛しい影
第1章 この世では 叶わぬとしても。
*佑


数日のうちに わたしは幾つかのことを憶え
此処へ預けられる事となった


神職は 親が子を見守る様な眼差しで
わたしを導いてくださっているとおもうのだけれど

時折 頬を指になぞられ、唇をおしあてられると
胸の奥で 《兄さま、、》と 呼んでしまう

お名前は 何故か、声に出さなくとも 呼べない

逆らえず ただされるがまま瞼を閉じる事は
裏切りになるのだろうか、、解らない。






そのように 暫くが過ぎた、ある日

ざざと 風が吹いて、雲が近づくなか
駆けてくる馬達が
ここを目指しているらしいと悟り

神職に 報せると、
本日 訪ね来るべきひとは無いとのこと。

仕える者総出で 急ぎ 門を閉じたものの
それは直ぐに開くこととなった



現れたのは 狩の装束を身につけた一行…

荒れた空がもたらした偶然により わたしは
その日、殿に 見初められ

風が騒めき 雨が滝の様に降り、ときに雷鳴の轟く夜
横へ来て 酌をせよ、と 命ぜられた



畏れ多くて、顔を俯け
手が震えぬように 無心で在ろうと努めたけれど

「其方も 盃を持て」促され
思わず 見上げれば

おなじ“ひと”は 思えぬような 大きな、、
ひとの貌をした 天狗か鬼かとさえ思えた殿の
厳つい手に、冷えた手を包まれ

呼吸すら忘れ 凍りつくわたしは
やがて緩やかな動きにて
殿の 腕の中、厚い胸に 抱き寄せられていた。























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