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サイドストーリー9
第23章 キミの体温 ボクの吐息②
そのまま水曜日まで新田くんと会えなくて
8時にエントランスで待っていると
満員のエレベーターのドアが開くとともに新田くんが飛び出してきた。

「ごめん。待った?」
時間は8時をほんの少し回ったところで
そんなに急がなくても良いのに。

きっと無理やり仕事を切り上げてきたに違いない。

「家に帰るのが遅くなるって連絡してくれるかな?」

お付き合いする時にきちんとウチに挨拶に来てくれた新田くんはお父さんの印象もよくて
新田くんといると言えば多少遅くても家の門限は甘くなる。

「朝、新田くんとデートって伝えたから平気だと思うけど」
「いや。日付をまたぐから。連絡して。心配するから」

新田くんはこーゆーところキッチっとしてる。
「うん」
新田くんに促されてお母さんに遅くなると連絡を入れた。

「今日はなんなの?」
タクシーの中で素朴な疑問を投げかけて見れば
「ん?」
知らないの?とばかりの顔をして
「じゃぁ、着いてからのお楽しみ」
と、教えてくれない。

タクシーが止まったのはベイサイドクラブから初めて2人で行った元町の奥まったバーで
店先には「会員貸し切り」の看板が大きくかかっていた。

「新田くん。今日は会員の貸し切りみたいよ?」
「大丈夫。俺も会員だから」

中に入るといつものジャズじゃなくてアップテンポのクラシックが流れていた。

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