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第21章 ドリンクサービス

　奈緒子はメールの脅迫どおり、管理人室へ行く。
　服装はかなりラフだった。着飾る必要は全くない。化粧っ気もないのは彼女自身のささやかな抵抗なのか？


　一階の奥にドアがある。そしてここしかない。
　そこは管理人室のための階であった。
　奈緒子がドアを叩こうとして、躊躇う。わざわざ恥辱されることへの悔しさ、家族に対する申し訳なさで突っ立ていた。
　

　奈緒子が覚悟を決めて叩こうとした時、いきなりドアが開き女を押し込むように管理人室に投げられた。


「きゃ！」


　奈緒子が管理人室に投げ入れられ、尻餅をつくとそこには坂本が仁王立ちしている。服装は昨日の作業服で、顔は少し強張っていた。
　奈緒子が室内を見渡す。整然としていて、仕事が行き届いていた。
　

「何ですぐに入らなかった」
「怖いです」
「誰かに見つかったら、怖いではすまないぞ」


　坂本が静かに淡々と言う。
　奈緒子が下を向き、震えている。怖いからだ。


「奧さん、よく逃げずにきたな。歓迎する。今日俺の仕事は終わった。楽なもんだ……さて、昨日の部屋に行くぞ」


　坂本が奈緒子の顔をしゃくり上げ、唇を重ねた。もちろん舌が侵入し女の口内を汚し始めた。
　唇を外すと肩を抱かれ、部屋の一室へ向かう。
　その部屋こそ、奈緒子の堕ちる場所だった。


　管理人室の向こう側にドアがある。そこは坂本が住んでいる場所だった。そこを開けると、昨日のままがある。
　奈緒子に昨日がフラッシュバックした。
　それを振り切るかのように、目を瞑り決心したように開く。坂本はそれを無言で見ていた。
　坂本がドアを閉める。
　冷たく重い響きが、部屋を包む。
　男と女の世界が、隔離された。


「上を向け」


　坂本が命令する。
　手には首輪がありそれを見せる。
　

「……一番、緩いのでお願いします。許して下さい」


　奈緒子が訴えた。
　坂本は無言で首輪を付けてやる。そして奈緒子の願いを聞いた。おそらくこれだけが許されるお願いだろう。


　首輪をすると、坂本が鋭く言った。


「脱げ！　見せつけるように、悩ましく脱いでいけ」


　冷たく笑う。
　奈緒子は深呼吸をする。
　息を吐くと、黒を基調にしたTシャツに手をかけた。
　両腕からシャツを取り首から外す。首輪にそれが引っ掛かる。