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世界で一人だけの君へ
第2章  15の春
「あれ?田辺くんメイクまだ?」

ADさんがノーメイクの僕に気付いた。

「すみません。
 まだ入り時間前だったので先に挨拶をと思いまして」

マネージャーが弁明する。

「田辺くんメイク室分かる?

 スタジオ出て左の奥の部屋」


「あ、ありがとうございます。
 行ってきます」


俺は意味もなく走り出した。

緊張しすぎて誰と何を話したのかもわからない。
スタジオを出ると大きくため息をつく。
一年分の気力を使った気がする...

こんなんで3ヶ月もやっていけるのだろうか...


壁にもたれる俺に
後ろから追い付いてきたマネージャーが苦笑いをした。

二人で真面目な顔になって見合わせて頷く。

コンコン

マネージャーがノックをしてドアを開けた。


「今日から入ります 田辺准一です
 宜しくお願いします」


「はーい。おはようございます。

 鏡前座ってね」


ポニーテールの彼女が振り向いた。



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