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世界で一人だけの君へ
第9章  アイドルの道
『おいおい』
そう言ってジュニアの大部屋に入ってきたのは中尾くん。

『坂井いるぅ?』

僕は衣装に袖をとおしながら返事をする

『これどういうことかなぁ?』

中尾くんはニヤニヤしながらスポーツ誌を放り投げた。

見ると1面に


《坂井賢夢 アイドルになる?!》 


という見出し


1面のかなりのサイズで俺が踊っている写真が掲載されている。

俺は驚いてスポーツ誌を読み始めた


『ったく。俺らのライブなのに
 俺、写ってねぇし』

『すみません...』

『バーカ 謝る必要ねぇよ。
 これがお前の実力。

 やっぱ お前 持ってるわ』

笑いながら中尾くんは控え室を出ていった。

新聞に群がるジュニアの子
 
嫉妬の目を向ける大人ジュニア...


芸能人としてこれはアリなのか...


その日からライブの様子が変わった。

客席近くで踊っていると

『坂井くーん』

という声が聞こえる。

振り向いてにっこり笑うと

『キャー』

という声が返ってくる。
その反応に驚いて振りを忘れそうになる。


昨日は客席をみる余裕はなかったが
良く見るとstampの団扇に混じって
ジュニアの団扇を振っている人もいる。
stamp目当てばかりじゃなさそうだ。

来週はここでジュニアのライブも予定されているが
stampのドームツアーに同行する俺はそのライブには出ない。


客席を眺めなから踊っていると突然腕を捕まれ走らされた。

名取くんだ。

オイオイどうなってんの?!


MCになると袖へ戻る俺を中尾くんが呼び止める。

『ドラフト1位指名 JYO事務所

 坂井賢夢!』

キャーという物凄い歓声が会場に沸き起こる。

俺はただ呆然とするしかなかった。
気の効いたことでも言いたいけど...

正直リアクションとれないよ...

参ったな...

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