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世界で一人だけの君へ
第10章  出逢い
今日の撮影は仲間との掛け合いが多い。

俺は友人Aで一宮くんに声をかけて通りすぎるだけの役。正直いてもいなくても作品には影響がない。

キャストの俳優陣はだいぶ撮影にも慣れてきたみたいで余裕がある。

現場はどんどん仕上げられていく。

「坂井、衣装は?」

一宮くんに聞かれる。

「僕は自前です」

「あ、そうか。メイクは?」

「メイク?しなきゃダメですか?」

一宮くんは呆れている

「ダメだろ。ちょっと待ってろ手の空いてるメイクさんいるか聞いてみるから」

僕は一宮くんについていった。


日避け用に張られたテントの下にメイクさんがいる。

「洋子さん、すみませんうちの新人なんですがまだメイクの仕方知らなくて...
 だれか手の空いている方いませんかね」


キャストのメイクをしていた洋子さんと呼ばれる女性が振り向いた。


「あら、一宮くん。
 JYO事務所の新人さん?
 相変わらずイケメン連れてくるわねぇ」

洋子さんは楽しそうに笑った。

「あー、うちのアシで良ければ。
 いまドリンク買いに行ってるからちょっと待ってて」

「すみません。助かります。
 じゃ、よろしくお願いします」

一宮くんはそう言うと俺を残して立ち去った。



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