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世界で一人だけの君へ
第11章  槙 璃子の力
どうしても“槙 璃子”に興味がある。

無意識の中に刷り込まれた感覚。
『俺には彼女が必要なんだ。
彼女を手に入れなければならない』


顔合わせの日、俺は必要以上に璃子さんに近づく。

「うちの田辺准一がお世話になりました」

璃子さんに頭を下げる。

「いえ、私は何も。
 彼の才能が見出だされただけです」

璃子さんは笑顔で答えてくれた。
でもやっぱり俺を覚えてはいない。
初対面のようなやり取り。


俺はここ数年業界で囁かれている噂を口にした。

「でも知ってますよ。
 ヒット作の陰に 槇 璃子あり」

彼女の顔が一瞬ドキリと歪んだ。

「何いってるんですか。
 すべては監督さんと俳優さんの努力です」

「そうですか。
 でもスタッフさんがいなければ自分達は何もできない。
 お世話になります。
 よろしくお願いします」

俺は握手を求めた。

「こちらこそ 宜しくお願いします

 いい現場にしたいですね」

彼女は一瞬俺の手を見つめてから頭を下げた。

何か警戒しているのだろうか。

俺の手は握らない。

その後は何となく避けられるようになってしまった。





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