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女鑑~おんなかがみ~
第14章 被虐
千鳥は寂しげに言った。
「しばらくは辛いだろうけれど,だんだん慣れるわ。こういう商売に慣れていくというのは,悲しいことだろうけれど,仕方がないからね」
「いいえ,私はこれでよかったのです。」と葵。
その表情が明るいことに夕顔は違和感を覚えた。
幼いころから遊女になるものと思っていた夕顔ですら,好きではない相手に身体を許すというのは本当に辛いことだったのに,ずっとお嬢様でいたはずの葵が平気でいることがやはり理解できないのだ。
「どうして,そんな風に思えるの」
「私は,本当は淫らで浅ましい女だったんです」
「え」
「私はこれまで,修身で習った通りに貞操を守る正しい娘だと自分で思っていました。でも私は,本当は男にいじめられて喜ぶような淫らな女だったんです。」
「……」
千鳥と夕顔は顔を見合わせた。
「それ,若槻さんに言われたのね」
千鳥は呆れたような声で尋ねた。
「はい,そう教えていただきました」と葵ははきはき答える。以前より幼く感じられるのは無理をしていないからか。
千鳥はため息をつき,そして思案して言葉を選びながら言った。
「あの…そういうのは,あまり,真に受けないほうが良いと思うわ。
男って,女をそういうふうに決めつけて,言うことをきかせようとするの。
別に葵ちゃんが特別に淫らなわけではないの。
身体がそうなっているから,好きな相手ではなくてもちゃんと濡れるし,欲しくなるものなの。だから,そういうものだと割り切って,身体を壊さないようにして,早くこの世界から足を洗うことを考えなきゃね」と千鳥。
「…それでもよいのです。私が実は淫らな女だと教えてもらってから,今まで自分でもわからなかったことがいろいろと腑に落ちるようになったので,感謝しています。」と葵。
「まあ,そう思うのなら止めはしないけれど…」と千鳥は複雑な様子でつぶやいた。
「しばらくは辛いだろうけれど,だんだん慣れるわ。こういう商売に慣れていくというのは,悲しいことだろうけれど,仕方がないからね」
「いいえ,私はこれでよかったのです。」と葵。
その表情が明るいことに夕顔は違和感を覚えた。
幼いころから遊女になるものと思っていた夕顔ですら,好きではない相手に身体を許すというのは本当に辛いことだったのに,ずっとお嬢様でいたはずの葵が平気でいることがやはり理解できないのだ。
「どうして,そんな風に思えるの」
「私は,本当は淫らで浅ましい女だったんです」
「え」
「私はこれまで,修身で習った通りに貞操を守る正しい娘だと自分で思っていました。でも私は,本当は男にいじめられて喜ぶような淫らな女だったんです。」
「……」
千鳥と夕顔は顔を見合わせた。
「それ,若槻さんに言われたのね」
千鳥は呆れたような声で尋ねた。
「はい,そう教えていただきました」と葵ははきはき答える。以前より幼く感じられるのは無理をしていないからか。
千鳥はため息をつき,そして思案して言葉を選びながら言った。
「あの…そういうのは,あまり,真に受けないほうが良いと思うわ。
男って,女をそういうふうに決めつけて,言うことをきかせようとするの。
別に葵ちゃんが特別に淫らなわけではないの。
身体がそうなっているから,好きな相手ではなくてもちゃんと濡れるし,欲しくなるものなの。だから,そういうものだと割り切って,身体を壊さないようにして,早くこの世界から足を洗うことを考えなきゃね」と千鳥。
「…それでもよいのです。私が実は淫らな女だと教えてもらってから,今まで自分でもわからなかったことがいろいろと腑に落ちるようになったので,感謝しています。」と葵。
「まあ,そう思うのなら止めはしないけれど…」と千鳥は複雑な様子でつぶやいた。