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女鑑~おんなかがみ~
第14章 被虐
そうしているうちに日が陰ってきた。
千鳥は帳場に座りながら,
「そろそろお客が来るころだね。今日と明日は葵は休んでいていいよ。無理のない範囲で賄いのタケさんの手伝いをしていて」と言う。
「ありがとうございます。」
「辛いのなら横になっていてもいいのよ。まだ痛いでしょ」
そうしていると,帳場には昨日来たばかりの若槻の姿が見えた。
「え,今日も…」
千鳥は驚いて立ち上がった。
「ごめんなさい。まだ葵は休ませており…」
「そうか。それなら仕方がないな。まあ,よろしく伝えておいて。また来るよ」
と少し名残惜しそうに立ち去ろうとした。
そこへ奥で繕いものを手伝っていた葵が現れ,
「今日もきてくださったのですか。すぐ支度します」と華やいだ声を上げた。
「本当にいいの」と念を押す千鳥に「大丈夫です」と言ったが,急いで動こうとするとまだ痛みがあるようで,一瞬顔をしかめた。
「どうか,今日は」
「わかっている。本人の望まないことをするつもりはない。昨日,いろいろと世話を掛けた分だ」
なじみの客の多くが,つけで払うというのに,若槻は明らかに多すぎる現金を先に払った。景気の悪いこのご時世にこれは何よりありがたい話で,千鳥は葵の健気さに心の中で手を合わせた。
千鳥は帳場に座りながら,
「そろそろお客が来るころだね。今日と明日は葵は休んでいていいよ。無理のない範囲で賄いのタケさんの手伝いをしていて」と言う。
「ありがとうございます。」
「辛いのなら横になっていてもいいのよ。まだ痛いでしょ」
そうしていると,帳場には昨日来たばかりの若槻の姿が見えた。
「え,今日も…」
千鳥は驚いて立ち上がった。
「ごめんなさい。まだ葵は休ませており…」
「そうか。それなら仕方がないな。まあ,よろしく伝えておいて。また来るよ」
と少し名残惜しそうに立ち去ろうとした。
そこへ奥で繕いものを手伝っていた葵が現れ,
「今日もきてくださったのですか。すぐ支度します」と華やいだ声を上げた。
「本当にいいの」と念を押す千鳥に「大丈夫です」と言ったが,急いで動こうとするとまだ痛みがあるようで,一瞬顔をしかめた。
「どうか,今日は」
「わかっている。本人の望まないことをするつもりはない。昨日,いろいろと世話を掛けた分だ」
なじみの客の多くが,つけで払うというのに,若槻は明らかに多すぎる現金を先に払った。景気の悪いこのご時世にこれは何よりありがたい話で,千鳥は葵の健気さに心の中で手を合わせた。