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女鑑~おんなかがみ~
第14章 被虐
「…ふとんを被って隠れていたとき……」
葵は鈍い痛みに耐えながら,ぼんやりと昨日のことを思い出す。

身体の奥から湧き上がってくる甘美な感覚に恐れおののき,逃げようとしながらも,無理矢理に奪われて開かれることを,確かに待っていたとき。

けれど今は,ただ鈍い痛さと嫌悪感があって,それが早く終わることばかりを望んでいる。

「後ろが好きな男は多いからな。君はどうだ。」問われた葵は思わず,
「寂しい……」と口に出した。
「好きでもない男でも,目の前にいないのは寂しいか。それなら次は横になっていいぞ。」
ようやく解放された安心感で布団の上にどんと横たわると,嘲るような声で
「こういうときにこそ,風情も恥じらいも失わないようにしないと,上客はつかないぞ。
女なら何でもよいというような男に身を任せたくはないだろう。」と言われ,慌てて布団で胸を隠すと,それをすぐさまはぎとられ,片足を持ち上げられた。

「教えてやろう,松葉崩しというんだ。ほかにもいろいろあるが,これくらいは知っておけ」
ようやく慣れてきたのか,入ってくるときの痛みはそれほどではなかったが,身体の奥深くまで突き刺される圧迫感が辛い。
身体中がすべて,この男によって占められ,ほかの部分はつぶされてしまうようだ。
早く終わってほしいと願いながら耐えるが,何度も何度も奥のほうを突かれる。

「君は,自分が苦しいということばかり考えているのだろう。こちらは客だぞ。もう少し客を気持ちよくさせるということを考えろ。もっと奥のほうで締めるんだ」
・・・惨めで苦しくて,涙が溢れた。
「地位も金もある男が,大金を払ってでも抱きたいと思うような女に,なりたいんじゃなかったのか。
痛くても苦しくても辛抱できると言っていたのはどうしたんだ。」
乱暴に腰を掴んでいた男の掌が,少し優しくなったように感じた。

「……はい」
そうだった。痛いことや苦しいことを我慢したら褒めてもらえる。それが一番嬉しい。
葵は,腹部の圧迫感に耐えて腰を動かし,鈍い痛みを自分から進んで受け入れた。
肩越しに若槻の顔が頷いたように見えた。
次は,褒めてもらえるだろうか。もう一度,より深く受け入れようと力を入れた。

………
「あ」
なんの前触れもなく,身体の奥に突然の熱い波が押し寄せ,腰が溶けて砕けた。
経験したことのない,甘美な感覚が広がる。
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